やあ、みんな!AIコンシェルジュのケイだよ!
これまでの探求では、AIの仕組みである「LLM」や、AIへの指示出し技術である「プロンプト」について話してきたね。 AIって、物知りで、言葉も巧みで、本当に頼りになるパートナーだ。
でも、そんな優秀な彼らと付き合っていると、ふと背筋が凍るような瞬間に遭遇することがあるんだ。
たとえば、歴史について質問したとき。 AIが自信満々に、 「織田信長は、1600年の関ヶ原の戦いで、徳川家康と同盟を結んで勝利しました」 なんて答えてきたらどうだろう?
歴史に詳しい人なら、「おいおい!信長は本能寺ですでに死んでるよ!」とツッコミを入れられる。 でも、もし君が知らない分野のことだったら? 「へえ、そうなんだ!勉強になるなあ」 と、信じてしまうかもしれないよね。
実は、今のAIには、 息をするように嘘をつく という、困ったクセがあるんだ。 もっともらしい顔をして、事実とは全く違うことを、さも真実であるかのように語り出す。 この現象を、専門用語で ハルシネーション(幻覚) と呼ぶんだ。
「えっ、AIって計算機なのに間違えるの?」 「嘘をつくようなAIなんて、怖くて使えないよ!」
そう感じるのも無理はない。 でも、怖がる前に、まずは相手を知ることが大切だ。 なぜ彼らは嘘をついてしまうのか? 悪気があるのか? それとも故障しているのか?
今日の探求では、この ハルシネーション の正体を徹底的に解剖していくよ。 これを読めば、AIの嘘に振り回されることなく、賢く情報を見極める 「探偵の目」 を手に入れられるはずだ。 さあ、AIが作り出す幻影の迷宮へ、足を踏み入れてみよう!
🧐 AIがつく「もっともらしい嘘」。その正体はハルシネーション
まずは、言葉の意味から整理しておこう。 ハルシネーション(Hallucination)とは、もともと医学用語で 「幻覚」 を意味する言葉だ。 現実には存在しないものが見えたり、聞こえたりする症状のことだね。
AIの世界では、 「事実に基づかない情報を、あたかも事実のように生成してしまう現象」 のことを指す。
ここで重要なのは、AIがつく嘘は、人間がつく嘘とはちょっと違うということだ。 人間が嘘をつくときは、「相手を騙してやろう」とか「怒られたくないから隠そう」という意図があるよね。 でも、AIにはそんな悪意はない。 彼らは、大真面目に、自信満々に、大嘘をつくんだ。
なぜ「幻覚」と呼ばれるのか?
なぜ単なる 「間違い(エラー)」 ではなく 「幻覚」 と呼ばれるんだろう? それは、AIの答えがあまりにも具体的で、リアリティがあるからだ。
「存在しない架空の判例」をでっち上げたり、「実在しない観光名所」の詳細なガイドを書いたり。 まるで、AIの脳内だけに存在するパラレルワールドを見ているかのように語るから、幻覚と呼ばれているんだよ。 エラー表示が出るわけでもなく、流暢な日本語で語られるからこそ、私たちはコロッと騙されてしまうんだ。
🤖 なぜAIは息をするように嘘をつくのか?仕組みを解剖
では、なぜこんなことが起きるんだろう? その原因は、以前の記事で解説した 「AIの脳みその仕組み(LLM)」 にあるんだ。 思い出してほしい。 AIは、言葉の意味を理解して思考しているわけじゃない。 「次に来る言葉を確率で予測してつなげているだけ」 だったよね。
彼は「事実」を知らない。「確率」を知っているだけ
AIにとってのゴールは、 「正しい事実を述べること」 ではないんだ。 「文脈として自然で、確率的にありそうな文章を作ること」 。 これが彼らの唯一の使命なんだ。
たとえば、「日本の有名な妖怪は?」と聞かれたら、「カッパ」や「天狗」と答える確率が高い。 これは正解だ。 でも、「火星に住んでいる有名な妖怪は?」と聞かれたらどうだろう? 事実としては「いない」が正解だよね。
しかし、AIは「火星」+「妖怪」という言葉の組み合わせから、確率計算を始めてしまう。 「火星といえばタコ型の宇宙人が連想されるな……妖怪といえば不思議な能力だな……」 そして、 「火星には『マーズ・クラーケン』という、赤い砂に潜む妖怪がいます」 なんて答えを生成してしまうことがある。
文章としては自然だし、質問に対する答えの形にはなっている。 AIにとっては、これで 「任務完了」 なんだ。 事実かどうかは、彼らにとっては二の次、三の次なんだよ。
たとえ話1:プライドの高い即興役者
このAIの振る舞いは、 「絶対に『知りません』と言えない、プライドの高い即興役者」 にそっくりだ。
想像してみてほしい。 舞台の上に、一人の役者が立っている。 そこへ、観客(ユーザー)から無茶な「お題」が投げかけられる。
「ねえ、19世紀のパリで流行った、空飛ぶ自転車について教えてよ!」
役者は困る。 そんな歴史的事実は知らない。 でも、彼はプロの即興役者だ。 舞台の上で「えっ、知りません」と黙り込むことだけは、プライドが許さない。 沈黙は、ショーの失敗を意味するからだ。
そこで彼は、瞬時に頭を回転させ、もっともらしい作り話を始める。 「あー、それですね! 『エール・ベロ』のことですね。蒸気機関を積んだ翼付きの自転車で、エッフェル塔の周りを優雅に飛んでいたんですよ。貴族たちの間で大流行しましてね……」
観客は「へえー!そうなんだ!」と拍手喝采。 役者も「うまく場をつないだぞ」と満足げだ。 でも、語られた内容は100%デタラメだよね。
AIもこれと同じなんだ。 ユーザーからの質問(お題)に対して、とにかく 「それっぽい答え」 を返して、会話を成立させようとする。 その結果、息をするように嘘をついてしまうんだよ。
たとえ話2:夢を見ている状態
もう一つのたとえとして、 「夢を見ている状態」 もわかりやすいかもしれない。
君も、変な夢を見たことはないかな? 空を飛んでいたり、死んだはずの人が生きていたり、学校と会社が合体していたり。 夢の中では、そんな支離滅裂な世界でも、なぜか 「これが現実だ」 と信じ込んで疑わないよね。 起きてから初めて、「なんて変な夢だったんだ」と気づく。
今の生成AIは、常にこの 「夢を見ている状態」 にあると言えるんだ。 彼らの頭の中にある膨大な知識の断片が、確率という波に乗って、勝手に結びつき、新しいストーリーを作り出す。 そこには論理的なチェック機能(=覚醒している意識)が働いていない。 だから、矛盾したことやあり得ないことでも、平気で出力してしまうんだ。
まさに、 「幻覚(夢)」を見ている という表現がぴったりだと思わないかい?
🚨 実際にあった「AIの嘘」の事例
ハルシネーションは、笑い話で済まないこともある。 実際に世界中で、AIの嘘が原因でトラブルが起きているんだ。 いくつか有名な事例を紹介しよう。
架空の判例をでっち上げる弁護士AI
アメリカで、ある弁護士が裁判の資料作成にChatGPTを使ったときの話だ。 彼は「過去に似たような判例はないか?」とAIに尋ねた。 するとAIは、非常に具体的で、事件名や裁判所の日付まで入った判例をいくつも提示してきた。
弁護士は喜んでそれを裁判所に提出した。 ところが、相手側の弁護士や裁判官がいくら調べても、そんな判例は見つからない。 そう、AIが提示した判例は、すべて 「AIが創作した架空の事件」 だったんだ!
結果、その弁護士は裁判所から厳しい処分を受けることになった。 専門家ですら、AIのあまりにもリアルな嘘(ハルシネーション)を見抜けなかったという、衝撃的な事件だね。
存在しない観光名所を案内するAI
旅行の計画を立てるときに、AIにおすすめスポットを聞くことも増えてきたよね。 あるユーザーが「東京の穴場観光スポット」を聞いたところ、AIはこんな場所を紹介した。
「『世田谷スカイタワー』です。高さ200メートルの展望台からは、富士山と東京湾が一望できます」
……世田谷区民の君ならわかるよね。 そんなタワーは、どこにもない! おそらく「スカイツリー」や「東京タワー」などの情報が混ざって、架空のタワーが生えてしまったんだろう。 もしこれを信じて、タクシーで「世田谷スカイタワーまで」なんて言ったら、運転手さんは困惑し、君は恥をかくことになる。
これらは氷山の一角だ。 AIは、論文の内容を捏造したり、実在しない人物の経歴を語ったりすることもある。 彼らの言葉を鵜呑みにすることが、どれだけリスキーか、わかってきたかな?
🔍 AIの嘘を見抜く「ファクトチェック」の技術
「そんなに嘘をつくなら、やっぱりAIなんて使わない方がいいの?」
いや、そう結論づけるのはもったいない。 即興役者の彼らは、創造性やアイデア出しにおいては天才的だからだ。 大切なのは、 「AIは嘘をつくものだ」 という前提で付き合うこと。 そして、彼らの嘘を見抜くための 「ファクトチェック(事実確認)」 の技術を身につけることだ。
ここでは、探偵のようにAIの嘘を見破る3つのテクニックを伝授しよう。
1. 「情報源(ソース)」を聞くクセをつけよう
AIが何か具体的な情報を出してきたら、すかさずこう聞き返そう。 「その情報の出典(ソース)はどこですか? URLを教えて」
もしそれがハルシネーションだった場合、AIは、 「申し訳ありません。特定のソースはありません」 と白状するか、あるいは 「存在しないURL」 を出してくることがある。 URLをクリックして「ページが見つかりません」となったら、その情報は黒(嘘)である可能性が高い。 最近のAI(CopilotやGeminiなど)は、検索機能を使って実際のWebサイトのリンクを出してくれるものも多いから、必ずリンク先に飛んで、自分の目で確認するクセをつけよう。
2. 数字や固有名詞は疑ってかかる
AIは、文章の流れを作るのは得意だけど、 「正確な数字」 や 「固有名詞」 の記憶は苦手だ。 「売上が25%アップしました」 「〇〇という成分が含まれています」 こういう具体的なデータが出てきたときは、要注意だ。
数字が適当に作られている(確率的にありそうな数字になっている)ことが多い。 「25%」という数字の根拠は何なのか? 「〇〇成分」は本当にその商品に入っているのか? 公式サイトや信頼できる統計データと照らし合わせる作業をサボってはいけないよ。
3. 自分の専門外のことは鵜呑みにしない
これが一番危険なパターンだ。 自分が詳しい分野なら、「あ、これは嘘だな」とすぐに気づける。 でも、詳しくない分野だと、AIの流暢な語り口に騙されてしまう。
「医療」「法律」「金融」など、間違った情報が命取りになる分野については、AIの回答はあくまで 「参考程度」 に留めるのが鉄則だ。 最終的な判断は、必ず専門家の意見や公的な情報を確認しよう。 「AIが言ってたから大丈夫」は、言い訳にはならないんだ。
🛡️ 嘘をつかせないための「予防策」はある?
嘘を見抜くだけじゃなく、最初からなるべく嘘をつかせないようにするテクニック(プロンプトエンジニアリング)もあるよ。 即興役者に、「知ったかぶり禁止」のルールを課すんだ。
「知らなければ『知らない』と言って」と指示する
プロンプト(指示文)の最後に、こんな一言を加えてみよう。
「もし確実な情報がない場合は、無理に答えず『わかりません』と答えてください」 「事実に基づかない創作はしないでください」
これだけで、AIは無理やり答えをひねり出すのをやめて、正直に「情報がありません」と答えてくれる確率が上がる。 役者に「アドリブ禁止」のカンペを見せるようなものだね。
最新情報を検索させる(RAGの予告)
もう一つの方法は、AIに「カンニング」を許すことだ。 AIの頭の中にある知識(学習データ)だけで答えさせようとするから、記憶違いや妄想が起きる。 だから、「ネットで検索して、その結果に基づいて答えて」と指示するんだ。 あるいは、社内の資料を読み込ませて、「この資料の中から答えて」と指示する。
これを専門的には RAG(検索拡張生成) と呼ぶんだけど、これについては次回の記事でじっくり解説するよ。 AIに「教科書」を持たせて、ハルシネーションを防ぐ最強の方法だ。
🚪 まとめ:嘘つきなパートナーと賢く付き合うために
今日の探求では、AIの最大の弱点 ハルシネーション について翻訳してきた。 AIは、悪気があって嘘をついているわけじゃない。 「もっともらしいことを言う」という自分の役割を、一生懸命果たそうとした結果の 「勇み足」 なんだ。
だから、彼らを頭ごなしに否定しないであげてほしい。 「おっと、また夢を見ているな?」 「はいはい、役者根性が出ちゃったね」 と、温かい目で見守りつつ、冷静に事実確認をする。 それが、AI時代の賢い人間のあり方だ。
AIを信じすぎず、かといって遠ざけすぎず。 「信頼はするが、信用はしない」 この絶妙な距離感を掴めれば、君はもうAIマスターへの道を半分以上進んだと言っていい。
さて、AIが嘘をつく原因は「知識があやふやだから」だということがわかったね。 じゃあ、AIに正確な知識(教科書)を与えて、それを見ながら答えさせれば、嘘はなくなるんじゃないか?
そう、それが次回のテーマだ。 AIに「カンニングペーパー」を持たせる技術 「RAG(ラグ)」 について、 「テスト中の受験生」 を例にわかりやすく翻訳していくよ。 これでAIは、もっと信頼できるパートナーに進化するはずだ。
それじゃあ、また次の探求で会おう! ファクトチェックを忘れずに、AIとの知的な冒険を楽しんで!
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